サスティナブルな取り組み・ ネスレ「キットカット」が商品を通して伝えたいこととは?

デザイン事例

2020年、ネスレ「キットカット」が

従来のプラスチックの外袋を、紙素材の外袋に切り替え

脱プラで話題になりましたよね。

今日は、「キットカット」のパッケージから

サスティナブルな取り組みの背景、商品を通して

ネスレが伝えたいことを考察します。

サスティナブルって何?

サスティナブルって、ここ数年で

やたら耳にするようになったワードですよね!

これって、一言で言ったらなんなのか、ということなんですが、

「人間・社会・地球環境の持続可能な発展」を意味するようです。

地球環境を守るための新しい考えを生活に取り入れようという

取り組みのことです。

これは、個人でも、企業でも考え方の姿勢としても

使われているんですね。

コロナ禍をきっかけに高まった消費者の関心

日本は世界に比べて関心が高いとは言えないですが、

若者のSNSを通じて当事者意識を感じ、じわりつつあるんです。

それを受け、日本企業でもサスティナビリティへの投資が

必要となってきているんです。

また、トレンドのワードとして「エシカル」という言葉もありますが

こちらもまたサスティナブルと似たような意味で、

「エシカル消費」「エシカル商品」は、地球環境や、人、社会に対して配慮されたものを購入・消費したり、またそのような商品のことを指します。

https://www.egmkt.co.jp/column/consumer/20210830_EG_172.html

「エシカル」の消費に対する意識調査がありましたので、

貼っておきます。

下の図を見てください。

エシカルであれば、2倍の価格でも購入する人が64%います。

【第17回】サステナブル・マーケティングに関わる消費者意識と「SDGs2020報告」を考える|講談社SDGs by C-station
各種消費者意識調査のデータをもとに、どのような施策が消費者のサステナブルな行動に結び付きやすいかを考察します。さらに最新の「SDGs報告2020」を一部紹介し、今後について考えます。

凸版印刷とネスレの環境負荷を低減するパッケージ

上記の流れから、商品の外包装の

不必要なパッケージや過剰包装の見直しをしようという動きが

この凸版印刷とネスレの「キットカット」という商品になります。

この発売時、かなり話題を呼びましたよね。

CMが必要ないくらいにメディアが取り上げてくれていたんじゃないですかね。

これだけ大手の会社がサスティナブルを掲げて、

環境問題に取り組むことは、影響も大きく、

一気に認知も広がりますね。

この取り組みは、益社団法人日本包装技術協会が主催する

「第44回木下賞 包装技術賞」を受賞したようです。

パッケージ スペック

色数はCMYK特色赤

チョコの画像がありますが、この写真のような表現を

印刷で表現するにはCMYKの4色は必須になります。

ブランドカラーは特色を取ることが多いです。

これは、色ブレを防ぐためです。

この商品で言ったらキットカットの赤に特色が使われています。

赤は、特色を使わない場合、2色(M版とY版)で表現をします。

M版とY版でキットカットの赤を表現することは可能ですが、

維持することは難しいです。

なぜなら版はずれますし、

M版だけ濃く出てしまったり、Y版だけ薄く出てしまったり、

2版の管理を全く同じに印刷することは不可能です。

特に、ブランドカラーは商品のシンボルになる色なので、

そういう大切な色は、特色を使うことが多いです。

余談ですが、オレンジと、紫は余裕があれば、特色をとることあります。

くすみやすい色で、汚いんですよね。CMYKの版で印刷すると。

それはまたおいおい、そんな商品があったら記載していきます。

主な素材は紙

素材に関していうと、商品の中側は、少しツルツルしてるんですよね。

これは、ヒートシール材ということで、

名前から考えるに、シールのようなツルツルな素材を熱圧着しているんだと思います。

印刷方式 グラビア印刷(だと思います)

だと思うっていうのは、調べたのですが出てこなかったんです。

私がグラビア印刷かな?と思うのは下記2点あります。

  • グラビア印刷特有のピンホールが多い
  • グラビア印刷は版が強いため、大量生産に向いている。

グラビア印刷って、きれいな印刷なんですよね。

なんですがこの「キットカット」の印刷面を見ると、

温かみを感じるというか、今までにあまり見ないやさしい風合いで、

それも地球にやさしいパッケージとして、

コンセプトにあっているのかもしれないですね。

ただし、このザラザラな風合いは、

食べ物のシズルには少し向いていないかもしれないですね。

シズルは、光ってるところにおいしさを感じるんですよね。

その光が、この印刷物ではフィルムに負けてしまっていると思いますね。

デザイン分析

まず、目の動線を考えます。

1番目に「KitKat」のロゴ

2番目にキットカットが割れているシズル

3番目に「おいしさそのまま」のキャッチコピー

かなと思います。

もう、お手本になるくらいい、無駄のない素敵なデザインですね。。。

清々しいです。。。

というのも、言いたいことは3つにまとめていることが

分析するとわかると思います。

商品開発の方が陥る注意点として、

言いたいことが多すぎるということがあります。

これも言いたい、あれも言いたい。わかります。。。

商品の良いところは伝えたいですよね。

しかし、伝えることが多くなり過ぎると、

本当に伝えたいことが伝わらないという

現象が起きてきてしまうんです。

これは物理的に、デザインがごちゃごちゃしますから

目の誘導がうまくいかなくなるんです。

また、自分が買い物をする際に商品を見て

どれだけの情報をキャッチできますか?

せいぜい1つか2つではないでしょうか。

消費者と商品の出合いの場(売り場)では、伝えられるのはそんなものです。

言いたいことを整理できている好例として、

この商品は良いデザインだなと感じました。

「KitKat」のロゴ

ここを大きくした意図としては、商品認知が行き届いていることが

挙げられると思います。

キットカットはCMや店舗でもよく見ますし、

外国人のお土産(抹茶フレーバー)としての認知や、

高級キットカットをデパートで展開していたり

ブランドとして熟成しています。

それだけの歴史や、費用をかけてここまで成長している

看板を大きくすることで、

その他の商品との差別化ができます。

ここはポイントですが、ブランド認知ができていると

認知されているブランドロゴを配置するだけで

正解のデザインができてしまいます。

どれだけ、ブランドを構築し育てていくことが大切かがわかります。

ブランドは資産なんですよね。

キットカットが割れているシズル

商品を割った画像を配置することで、

カリッとした食感を表現して、

また同時においしさも伝えていいます。

このシズルは、あると無いとでは大違いです。

このシズルを試しに消してみました。(雑でごめんね!笑)

シズルをなくしたら、めちゃスッキリしましたね!!

これでも成立してしまいますね。

それは、ブランドが確立しているからですが、

これがチョコであることは、

「キットカット」をチョコと知らない人が

いたとしたらどうでしょうか。

認知が広がっているだけに、チョコと知らない人はいないかもしれないですが、

例えばチョコが嫌いなおじいさんとか?

知らない人から見たら、この商品が何かがパッと見て

わからないかもしれないのです。

あとは、おいしさが格段に下がりましたよね。

この商品を売り場で見て、

「あ!おいしそう、最近食べてないから買っちゃお」って

思って欲しいんですけど、シズルなしだと、

その感情を動かしづらいかもしれないですね。

スーパーに行く人で、キットカットを買いに行く人は

少ないと思います。

多くは、今日の晩御飯を買いに行ったり、

他のお目当てがあります。

ついでにこの商品は買われることが多いんです。

つまり、おいしそう!と思わせることは

ついで買いをさせるのに、心を動かすのがシズルの役割にもなっています。

「おいしさそのまま!」のキャッチコピー

「おいしさこのまま!」の下に、ベージュでお座布団がひいてありますね。

これによって可読性が上がっています。

で、なんですけど、おいしさそのままって、

??ってなりません?

おいしさがそのままを伝える利点を、考えていきましょう。

この下に、「砂糖10%減」の記載あります。

これについてですが、

要はカロリーオフ商品を私は買ったってことが、

ここでわかると思うのですが、

なんで「おいしさそのまま」ってわざわざ

買いたんだと思いますか?

しかも、「カロリーオフ」よりも、おいしさの維持を

伝えているってことになります。

これは、世の中のカロリーオフ商品ってまずいって

思っている人が多いということです。

ここで、「カロリーオフ!」って書くと、

え?このキットカットはまずいんじゃない?とか

違う添加物が入っているのは無いのか。

とか、無駄な憶測を招くわけなんですよ。

なので、このワードにしたのかなと思います。

裏面デザイン

裏面(りめん)には、なんと素敵な情報があったので、載せたいと思います。

はい、賞味期限が切れています。(分析が終わったら破棄ですね。汗)

そこではありません!

「個包装を組み合わせてオリジナルメッセージを贈ろう」となっています。

ということで、中身の個包装のデザインを見てみましょうか。

個包装パッケージ分析

わー!!

たくさんのデザインが入っていました!

これは、グラビア印刷で、同じ1版で、版の大きさの限界まで

異なるデザインを一気に印刷することができるんですよ。

それで、この多種類のデザインができています。

キットカットの個包装には、2色使われていますね。白と赤です。

私の袋に入っていたのは、9種類ありました。

これだけ入っていると楽しいですよね!

全部で21種類あるらしいので、その半分行かないくらいのデザインが

1袋に入っているって感じですね。

で、これを組み合わせて人にあげようってことですね!

おもしろいですね。

ここでのポイントは、

あれ自分で食べるんじゃ無いんだ?ってところです。

つまり、この商品は、人にあげることを想定した

企画やデザインをしているってところです。

また、これを知ったら、人にあげてみようかな

と思いますよね。

キットカットの大袋を購入する人は、

人に配るというユーザーが多いことを知った上での

企画なんじゃ無いかなと推測します。

実際の購入ユーザーに刺さる試作として、さらに有効だと感じました。

人にあげると、その人も後を引いて

大袋のキットカットを購入してくれるかもしれないですね。

SNSの拡散マーケティングのような戦略をここで見て、

私は一人部屋で震えていたんですけど。。。

キットカットはすごいですねー。マーケティングが上手ですね。。。

ちなみに、個包装の裏には、「お返しはいらないよ」という

とても気遣いのあるメッセージが印刷されていました。

伝えたいテーマを深堀!

このブランドは、この商品を通して、何を伝えたいんでしょうか。。。

私は、この商品から、「楽しさや、コミュニケーション」を感じました。

表面デザインからは感じ取れませんが、

商品企画、個包装からの取り組みは

この商品を通じて、人とのコミュニケーションの架け橋的な存在になってほしいと

企画の方は思っていたのでは無いでしょうか。

もし、私がデザイナーなら、3番目に目立つあたりに、

「オリジナルメッセージを送ろう!」とか、

このテーマを表面デザインでも伝えますかね。

というのも、3番目の「おいしさそのまま」「砂糖10%減」が、

私にはあまり刺さらなかったからです。

どちらかというと、10%減ることで、

1袋あたり何キロカロリー減るのかの方が興味があります。。。

まとめ

新しい取り組みを行い、ブランドを育てている

ネスレの「キットカット」(一年前のデザイン)を分析していきました。

サスティナブルへの取り組み、明解なデザイン、

楽しいコミニュケーションツールとしての企画。

どれを見ても、なんか完璧。。。という商品でした。

既存の商品と、現代のトレンドやニーズを掛け合わせて表現していますよね。

今後、他のフレーバーの違いや展開なども取り上げていきたいと思います。

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